加藤シゲアキ作家デビュー8周年に寄せて
加藤さん作家デビュー8周年おめでとう!
本当なら10周年とかキリのいい数字の年に書けばいいのだろうけど、加藤さんが文壇デビューした年齢24歳と今の私が23歳。小説を書き始めた頃の加藤さんと歳の近い今、自分の武器は何か。自分には何ができるのか。自分の存在意義は何か等々8年前の加藤さんと同じように悩んだりしている。はっきりこれだ!という答えは見つかっていないけど、なんとか生きてるよ!若い頃の加藤さんもこんな感じだったのかなぁと加藤さんに思いを馳せながらつらつらと加藤さんの作家としての軌跡を書いていこうと思う。
2011年
NEWSがまだ6人だった頃グループを守るために小説を書き始めた加藤さん。でも、山下君と山下くんと錦戸くんの脱退までに本を出すことができなかった。
「小説を書くことで2人を繋ぎとめたいと願っていたけど、間に合わなかった」
2015年のMyojo1万字インタビューで語られたその言葉は、とても切なかった。
加藤さんが小説を書くに至った理由は他にもある。
ジャニーズ webでの連載吾輩はシゲであるやMyojoの青い独り言がファンに好評であったため、面白がってくれる人がいるなら書いてみようと思ったこと。
釣り友達の大野くんが個展を開いたこと。それに対して後に加藤さんが大野くんのおかげでと感謝の気持ちを伝えたら、「俺は何にもしてない。だから言うな」って言われたそう。何もしてないって言うあたりがとても大野くんらしいけど、きっと加藤さんには大きな支えになっていたと思う。
昔二宮くんが仕事がそんなになかった頃、事務所に「仕事くれ」と言いに行きそれで受けたオーディションが「硫黄島からの手紙」だったこと。その話に触発されて、事務所に仕事くださいと言いに行ったものの「あなたに何ができるの?」と言われ「多角的な思考ができます…」と抽象的なことしか言えなかった加藤さん。きっと、めちゃくちゃ悔しかったろうね。
私も入社して2ヶ月くらい経って配属のことや仕事のことで人事の人と面談した時、今のあなたに何ができるの?あなたを会社に縛り付けるつもりはないけど、自分に箔つけてから転職しないと給与も落ちるのよ。と厳しいことを言われた時すごく打ちのめされたし、加藤さんもこんな気持ちだったのかなぁと思った。
2012年1月28日
デビュー作『ピンクとグレー』を発表
それに合わせてたくさんの方に親しんでもらえるというように名前を加藤成亮から加藤シゲアキに変えた。アイドルが書いた小説ということで、世間から色眼鏡で見られ感想を聞くのが怖かったという加藤さん。でも、思ったよりも反応がよくて「お前が思うより世界は優しい」と思ったそう。単行本の帯には石田衣良さんからの推薦文が寄せられた。
この本はジャニーズの誰かが描いた芸能界の裏側ではなく、
才能あるひとりの青年が全力で書いた”リアル”だ。
この帯の推薦文の意味を私はすぐには理解できなかった。昨年のRIDE ON TIMEで『大造じいさんと雁』の読者感想画の話を聞くまでは。そこで、ああこの人は本を書くために生まれてきたのだなぁと思った。
また、一般的に「処女作ほど自己投影されやすい」と聞くが、その言葉の通りごっちとりばちゃんが加藤さんを投影しているように思えて読み進めるのが辛かった。白木蓮吾として大成し仕事が増えていくごっちと、もらえる仕事はバーターばかりで次第に仕事がなくなっていくりばちゃん。これは加藤さんの実体験なのだろうなぁと思ったりした。
2013年
『閃光スクランブル』を発表
人気アイドルグループMORSに所属する亜希子とパパラッチカメラマン巧の逃避行。同期の卒業、新メンバーの加入によりグループの中での自分のポジションを確立できず悩む亜希子の姿と加藤さんの姿が少し重なった。ジャニーズに卒業という制度はないが度重なるメンバーの脱退や活動休止を経験したNEWS。人数が多かった頃のNEWSで加藤さんはグループの中での自分の立ち位置に悩んでいたと思われる。絶対的センターの山PとNEWSのエースの亮ちゃん。自分が影になることで誰かが輝くならと影に徹していたこともある加藤さん。Jr.時代はエリート街道まっしぐらだったのにNEWSになったら立ち位置は端の方。加藤さんも小説家という肩書きができるまではすごくもがき苦しんだと思う。
2014年
『Burn.-バーン-』を発表
天才子役レイジとホームレス徳さんドラッグクイーン・ローズの生まれも経歴も何もかもが違う3人が家族のように心を通わせる話。渋谷サーガの中で1番最初に読んだ本だと記憶している。主人公が教室で感情を爆発させるシーンがあり一人っ子で喧嘩の仕方がわからなかったという加藤さんと重なって愛おしいなと思った。
2015年
初の短編集『傘をもたない蟻たちは』を発表
加藤さん初の短編小説。ジャニーズなのにこんな生々しい性描写していいのかと話題になったが、これは加藤さんの頭の中の妄想がそのまま本になったのだし本人も立派な大人なのだからと気にせず読んだ気がする。個人的には「にべもなくよるべもなく」が好きだ。
そして、『傘を持たない蟻たちは』はドラマ化され、加藤さんは原作者兼ドラマオリジナルキャラクターとしてドラマ出演。ドラマ主題歌はNEWSのヒカリノシズク。ヒカリノシズクは加藤さんそのものを歌っているようで感情移入せざるを得なかったし、シゲ担にとってもとても大切な曲となった。
2016年
『ピンクとグレー』が映画化される
主演は中島裕翔くん、菅田将暉くん。監督は『世界の中心で愛を叫ぶ』などで知られる行定勲監督。加藤さんもカメオ出演したらしいが全然見つけられなかった。
2017年
『チュベローズで待ってる【AGE22・AGE32】』を発表
本作を読んで私シゲ担になる。何度も色んな媒体で書いていますが、料理や香水香りの五感に訴えかける描写や伏線回収が秀逸なんですよね。アイドルが書いた小説ということで色眼鏡で見ていましたが、いい意味で期待を裏切られました。週刊誌で連載していたということで加藤さん書くの大変だったと思う。お疲れ様でした。
2018年
ミアキスは本当にギミックが効いているというか伏線が張り巡らされている作品なので、読者としては読むのは楽しいが加藤さん書くの大変そう。※RIDE ON TIME参照
小説トリッパーで連載しているできることならスティードでのTrip.4岡山が『ベストエッセイ2018』に選ばれる。
2019年
6月に加藤さん含め7人の若手作家が書き下ろしたアンソロジー『行きたくない』が角川文庫から発売。参加した7人の作家さんの中でも加藤さんが一番作家歴が長くて、ファンとしてちょっと鼻が高かった。
12月に小説新潮で長編小説『オルタネート』の連載開始。いつぞやのレタスクラブのインタビューで、女子高生の青春小説書いてます。調べ物が大変です。と話していて、えっ!?加藤さんミアキスシンフォニーとトリッパーの他にも書いてるの!?と驚いたことをよく覚えている。文芸誌で連載ができるなんて加藤さんもうすっかり大物作家の仲間入りでは!ととても嬉しかった。
余談ですが、毎月文芸誌を買うのはお金が厳しい…という学生さんとかは公立図書館や大学の図書館に小説新潮置いてある可能性が高いのでオススメです。
この8年の間に5作品が世に出された。(行きたくないを含むと6作品)何よりこの8年の間で変わったことは、加藤さんきっかけでNEWSに還元される仕事が増えたことだ。傘蟻然り、ゼロ然り。メンバーが「シゲ仕事とってきてくれてありがとう」と感謝を伝える場面を見るたびに目頭が熱くなってしまう。加藤さんは今までNEWSにいていい理由を探し続けるためにずっと旅をし続けてきた気がする。でも、今の加藤さんは違う。加藤さんはNEWSになくてはならない存在だ。謙遜することはあるけど、自分なんてと卑下することが減った気がする。NEWSの夢を叶えるためにそれぞれのフィールドで戦って、4人で旅を続けているような印象を受ける。
また、ジャニーズ後輩たちを見ていて今のアイドルは歌って、踊れて、顔がいいだけじゃ足りないのだということを実感している。それだけでは、グループの中で埋れてしまったり、個が立たないのだ。例えばSnow Manの阿部亮平くん。気象予報士の資格を持っており、ジャニーズ初の大学院卒アイドルの肩書きは強い。ZIPのキテルネ!コーナーではリポーターを務めており(実質女子アナ)、クイズ番組での活躍もめざましい。
余談だが、阿部くんもグループに還元するために何ができるか考え、大学進学をした。Snow ManがまだMis.Snow Manだった当時グループがなくなってまうかもしれないのに受験休みを取った阿部ちゃんを見て、グループより受験が大切なのかと思っていた舘様。そんなだてあべの雪融けエピも尊いのでよかったら調べてみてください。
あとは、青学の後輩川島如恵留くん。ジャニーズ初の宅地宅建取引士の資格を取得。仕事の合間を縫って保育士資格取得のために勉強しているらしい。法学部の人でさえ宅建とるの難しいのに、専攻法学部じゃなかった如恵留くんの努力たるや。FNS歌謡祭の合間に加藤さんに「宅建取れたのはシゲくんのおかげです!」とお礼を言いに来てくれたらしい。加藤さんが随分前に資格とかわかりやすい肩書きとか名刺がわりになるものを持っていたほうが仕事に繋がるかもねと話したことに触発されて宅建の勉強を始めたそう。大野くんや二宮くんに触発されて小説書こうと思ったのに今度はあなたが誰かに影響を与える人になるとは。感慨深い。
個人的に、Jr.祭り8.8でスノストデビュー発表聞いて悔しいはずなのにSixTONESの着替え場までハグしに来てくれた如恵留くんの姿が印象に残っています。Travis Japanはもっと強くなる。そう信じてる。数少ない加藤さんを慕ってくれてる後輩ということでひいき目で見ています。応援してるよのえるママ!※とらチューブ参照
ファンとしては加藤さんに賞を獲って欲しいなと思うけど、こればっかりは作品と賞の審査員の方の相性もあるからどうしようもない。タイプライターズファミリーでお馴染み羽田先生も芥川賞候補に何回も呼ばれるも、林真理子先生に厳しく批評されたりしてたものね。
また、たまたま買ったViVi2月号ににkemioさんとの対談で朝井リョウさんのインタビューが載っていた。朝井さんがデビューした頃は、とにかく新人賞に応募して受賞する道しかなかった。大きな権威的なものに引き上げてもらったという実感が強い。でも、今一番読者に届くニュースって直木賞ではなかったりする。きっと自分は、駆逐される既得権益側なんだろうなと自虐的に語っていた。確かに朝井さんが新人賞・直木賞を獲った頃よりも、賞をとること=若手作家の登竜門というイメージは薄れてきているのかもしれない。今は、Twitterやnoteでバズっている人たちが出版社の編集の方に見つかって本を出すという流れも増えてきている。
出版業界を取り巻く環境も大きく変わった。紙書籍の売り上げは年々減少し、電子書籍の台頭が著しい。それに伴い、廃刊に追い込まれる雑誌や閉店する書店も増えてきている。京都にお住いの方ならご存知だろうが、北大路にある大垣書店本店が閉店していて驚いた。
加藤さんに出版界に革命を起こせ!とは言わない。しかし、NEWSの加藤くんが書いてる小説なら読んでみようという読者層も少なからずいると思うので、普段本を読まない層が小説を手にとるハードルを下げてくれる作家として勝手に期待しています。
最後にどうしても触れておきたいのが天にいるお父さん、ジャニーさんのことだ。ジャニーさんが角川とのパイプがなければ加藤さんは作家デビューできなかったかもしれない。1か月で書いてきてはなかなかハードだったと思うが、あなたのおかげで『ピンクとグレー』を世に出すことができました。できることならスティードで最終回で加藤さんが最後にジャニーさんと会った時「YOU最低だよ」と言われてショックを受けたこと。加藤さんはその後ジャニーさんのことを避けてしまったが、きっとその間も加藤さんの活躍を見ていたんじゃないかなぁ。小説新潮で長編『オルタネート』の連載が決まり、初掲載の1月号が小説新潮始まって以来の異例の重版。ジャニーさんもきっと「YOU最高だよ」と思ったはずだよ。
長々と書いてしまったけれど改めて、加藤さん作家デビュー8周年おめでとう。
アイドルと作家の二足の草鞋は我々ファンが想像するよりはるかに大変だろうけど、くれぐれもお身体にはご自愛ください。これからも加藤さんの紡ぐ文章を愛しています。